キュートな笑顔、挑発的な視線、エレガントな立ち振る舞い・・・。
さまざまな表情を見せながらもしっかりと独自のスタイルを確立している
大橋美由紀のイラストレーション。服を着ること、メイクをすることの楽しさや
喜びまでも気づかせてくれる、そんな世界観を演出する基盤には、
実に意外な答えがありました。
interview & text:藤間保弘(asterisk)
藤間:まずイラストレーターになられたきっかけについてお話しいただきたいと思います。
大橋:幼少期の頃からずーっとよく絵は描いていたんです。
えんぴつやクレヨンでチラシの裏に描いたりして、それを切ったり貼ったりしていました。小学生の時は「オヨネコぶーにゃん」とか「あさりちゃん」などの漫画が好きで、それをマネして描いたりしていました。特にイラストを仕事にしたいとは思ってはいなかったのですが、小、中、高、大学までずっとイラストは描き続けていたんです。大学卒業の時期にさしかかったときに将来どうしようかなぁと考えて、でも就職は考えてなくて・・漠然と「絵」を描き続けたいとだけ思っていました。なのにイラストレーターになろうという選択はその時でさえも考えていませんでした(笑)それまでずっと自己流で描いてきたので、ちゃんと「絵」を学ぼうと思いはじめて、就職はせずにセツモードセミナーという教室に通いだしたんです。
藤間:なぜセツモードセミナーを選ばれたのでしょうか。
大橋:学費が安かったんです(笑)。週3回で2年間通って卒業なんですが、その後希望者は「研究科」に進めて、これはいついってもいいので、とりあえず授業料を払っておいて行きたいときに行くという感じでした。
藤間:まずは基本的なデッサンの授業だったりするんですか?
大橋:そうです。モデルさんをたてて・・クロッキーで描く、ほとんどそればっかりなんですよ。モデルさんの周りをぐるぐる、ぐるぐる・・・(笑)とにかく描きたいだけ描くというのがとても自分に合っていたんです。
藤間:すごく自由な感じですね。他にはどんな授業が?
大橋:ファッションイラストを描かせる課題があるんですよ。ファッション科の先生が作った服をモデルさんに着せてそれをデッサンしたり、コレクションを見たりして描くといった感じで。それを先生やみんなと見合わせて、これいいねとか意見を言いあったり。
藤間:ファッションを描くことが前提なんですね。
大橋:節先生が元々ファッションイラストレーターなんです。でも、そういった枠にはまらずにいろいろなアーティストの方々がでてきていると思いますよ。作品を先生に見てもらって、「これは向いているね」という意見をもらって、それぞれの方向性が見えてくるみたいな。
藤間:その時、見せたのがいまのような作風だったのですか?
大橋:まったく同じではないですが、近い雰囲気でした。
藤間:その後、セツモードセミナーを卒業してイラストレーターとしてお仕事をされるようになったんですね。特にファッション系のお仕事が多いと思いますが、イラストを描く上で何かこだわりとかありますか?
大橋:好きな感じの服を描きたいというのももちろんありますが、それ以上に自分では着られないような服を表現したいという願望があります。かなり大胆な服とか、絶対に自分では着られないような服(笑)。こんな格好した子がいたらかわいいだろうなーなんて思いながら描きます。自分が着るという前提より、浮世離れしているような、普段それでは通勤できないような服が好きなんです。
藤間:「着たい」という願望が描かせているんですね(笑)
大橋:お店で素敵な服を見て、欲しいんだけど買えないときに・・・家に帰ってから、その服を描いたことがあります。買いたい欲求を解消するとこまではいかないですけど・・。それに近いものはあります。それで満足することもありました(笑)
藤間:そういった願望が大胆な筆のタッチに現れているのかもしれませんね。
大橋:かもしれないですね。あとは、リアルに描きすぎないようにしています。時代ごとにファッションの移り変わりはあるけど、それらを忠実に反映してしまうとあとで見たときにダサイとか古くさいと思われるのは嫌だなぁというのはあって。でも、ただそぎ落とすだけではなく、野暮な部分をいれることで自分らしさをだせればと思っています。例えば人物の顔なんかは、見るからに整った感じの顔じゃなくて、鼻が上を向いてたり、目が離れていたりとか。
藤間:なるほど、面白いですね。大橋さんはモノクロの作品も多く描かれていますね。
大橋:それ実は、クロサワ映画の影響です。クロサワ映画大好きなんです。特にモノクロの作品が大好きで。20代半ばで初めて見て、衝撃を受けました。それからすべてが変わったとはいわないですけど、それ以降はモノクロを描くときに必ず頭の中に「クロサワ映画」がありますし、構図とかすごく参考にしてます。「蜘蛛巣城」とかゾーッとしましたもん、すごすぎて!(笑)作品をつくるときの妥協をゆるさない、とことん作り込むという黒沢さん自身のプロフェッショナルな姿勢を尊敬するというか、あんなすごい人にはなれないですけど、自分が仕事をする上でそういった意識を持っていきたいというのはあります・・。音楽を聞きながら描く方などは多いかと思うんですけど、私はクロサワ映画を見ながら描くこともありますから(笑)
藤間:意外ですね(笑)
大橋:昔の映画だけど、今見ても新鮮だし、時代を超えちゃっている感があるんですよね。自分もそんな作品を描けるように、いつ見ても「いいね」って思えるものを描いていきたいです。