絵の話・話の絵

アトリエを出る時雨の臭いがした。自動点滅の電燈賀がすぐ消えてしまう長いアパートの廊下を早足で歩き厚い木の扉を開けるとやはり小雨が降っていた。道路に反射する光はガシャガシャと騒がしい音をたてる安物のカラーセロファンのフタロブルーとチャコールグレーを通りぬけた様な弱々しい色だった。私はボロ猫の視覚みたいな光線だと思った。その瞬間体から自分の視線だけがすっと離れる様な気持におそわれた。自分の黄色い皮膚、絵の具が入り込んだ爪を初めて見る物の様に異様に思え怯えを感じた。それはかんな風に生きていることがひどく心もとない感覚。この状態はずっとのがれられないのだろう。その選択はとっくに自分の意志も知覚も無い所で行われてしまい、ただ自分はこの怖しい道を先へ先へと進んでゆくしかない。一種非合理な胸ぐるしい感覚を描いてみた。
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