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庄野 藤谷さんが出版社を立ち上げ、本を自分で作ろうと思ったきっかけは?
藤谷 編集者時代にネットを通じて著者のぶんろくさんの文章に出会い、
とても面白かったからいつか自分の手で本にしたいと思っていて、企画を
ずっとあたためてたの。ただ自分で出版しなくても、企画を売ること
もできるし、実際に買ってくれるそうなところもあったんだけど
やっぱり売りたくなくなってきた。
庄野 その理由というのは?
藤谷 その理由は・・・んーよく分からないんだけど色んな人との出会いがあって、
自分の想いがその人たちとシンクロしていって、いつの間にか自分で出さな
きゃという気持ちになってきて。
庄野 そう思うに至ったキーパーソン、奈路さんとの出会いは?
藤谷 私が勤めていた出版社で彼のイラストをカバーに使ったデザイナーがいて
そのデザインの打ち合わせ場所に作品ファイルがおいてあったの。
見たら大阪の絵がたくさんあって、「この人に是非お会いしたい。」と
その時から思っていた。そして、そのデザイン事務所の親しい友人から展覧会の
案内をもらって見に行ったの。そこで実際に奈路さんの作品を見て「この人に
描いてもらおう。」と決心した。
庄野 では、奈路さんがこのお仕事を引き受けようと思ったのは?
奈路 僕も広告の仕事とかずっとやってるんだけど嫌になってた時期もあって、
今回この話をもらって・・・「面白そうだな」と。
庄野 ぶんろくさんの王さまの話を読んでパッと絵が浮かんでくる感じだったんですか?
奈路 本の仕事をやってて、今までで一番インスピレーションを受ける文章でした。
庄野 イラストを描くにあたって、著者のぶんろくさんから何か注文はありましたか?
奈路 何かに冠をかぶせて「王さま」を表現するというの以外は自由に描いてくださいと・・・
庄野 確かにぶんろくさんの文章が先にありきなんですが、どちらが先か分からない
くらい見事に融合されてます。
藤谷 こんなに楽しい仕事はもうあまりないんじゃないかな。だからやっばりこの企画を
人に売りたくない、というのもあったんやろなと思うんです。
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左が藤谷さん、右奥が奈路さん。 |
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『王さまがいっぱい』の原画の数々。 |
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庄野 ぶんろくさんの文章があって、奈路さんのイラストがあって、ふたりは全然
お互いの作品を知らなかったんだけど、藤谷さんが動くことによって出会い、
一冊の本として完成されていく。やはり、そこにはそれぞれの想いがシンクロ
しているんだと思います。ただ、よく聞かれることだと思うんですが、そういう
出会いがあったにせよ、不況の最中、藤谷さんが出版社としてやっていこうと
いう気持ちはどういう過程で出てきたものなんでしょうか?
藤谷 独立とかにかかわらず、なぜ私はそうしているのだろうと時々考えるけど、
今の日本で生きていこうと思もえば何しても生きていけるはずなんですよ。
バイトにせよ、不況と言えどまだまだ働き口があるねんから、
やろうと思えば何でもできると思うねんけど、結構みんなやりはれへん。
だからと言って、私はなぜこうしてるのと問われたら特に理由はないんだけど・・・
「自分に出来ることはそれだから」という理由しかない。
自分の職能としてあるのは「編集者だから」っていうのしかないんです。
庄野 本を出版するにあたって、セールスの問題というのはどう考えますか?
藤谷 んー、自分が面白いと思ったことをやるだけで、マーケティングなんて
一切やらないし。売れるか売れないかって考えたら、もちろん売れると信じて
やるし、結局は自分を信じてやるしかない。もしお金が尽きて、本が創れない
状態になったとしてもその時はその時だし。
庄野 そうして今春スタートした圓津喜屋ですが、本を創るうえでのテーマは?
藤谷 学者や先生と呼ばれる方の本は他の出版社でいくらでも取り上げられる機会がある
だろうから、私はあえて他の人がやらない仕事をやりたい。具体的なテーマとしては、
日本の文化、衣食住を追求したい。そして人と世界を知りたい。年3冊出版すると
いうのが目標で、それを越えるとオーバーワークなんだけど、すでに今年だけで
4冊になりそう。 |
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食堂時代のショーケースはそのままに、本が並べられています。 |
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庄野 この場所をギャラリーにしようと思ったのは、どういう経緯だったんですか?
藤谷 いろいろな出会いがあって、自分の想いがその人たちの考えとシンクロしていって、
自然な成り行きとして、今の形があるという感じ。本当は去年の4月から
日本語教師養成講座に行き始めて、バリ島に行って日本語を教えようとずっと
思ってたから、出版社をやると決意したのは去年の12月。ギャラリーもその頃。
庄野 えっ!、じゃあほんの3ヶ月前の話なんですか?
藤谷 そこまで急展開していったのは、おふたりに出会ったからで、おふたりがいらっしゃら
なかったらここはできなかった。 私は編集者だったのでギャラリーの運営なんか
できませんから、彼ら2人がいなかったらできなかった。
奈路 2人というのは、もう1人の男性との出会いがあって、その人は、ここの総合プロ
デューサーの西桐さん。
奈路 僕と西桐さんは実は10年前くらいから名前と顔はお互いに知っていたんです。
というのは、ふたりとも雑誌は違ったんですが、エルマガジン社さんの仕事をやって
まして、だけど親しくなったのはつい最近で、ここの前にやった展覧会が西桐さんの
やってるギャラリーだったんです。藤谷さんも西桐さんとそこで出会った。 |
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絵本の中の王さまはすべてモノクロですが、今回の展覧会のためにカラーの王さまたちが描きおろされました。 |
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藤谷 私が展覧会に行ったのは最終日だったのね。時間も遅くて、お客さんがみんないなく
なって3人だけになったの。その時に奈路さんと西桐さんが「2人でこんな面白いこと
考えてる」ってコンセプトを見せてもらったのね、そしたらもうほんとに面白くって。
庄野 どんなことだったんですか、例えば?
奈路 西桐さんもイラストレーションをやってるんですけど、2人とも営業が苦手なタイプ
でして、だから2人が組んだら 営業とか行っても自分のことは言えなくても、相手の
ことは言えるかなと思って・・・
(全員大爆笑)
奈路 それで「2人で組もか」って。2人でもしやるならば、どういった所で事務所を借りて、
仕事場にするかというロケーションを考えて。普通イラストレーターというと横文字やし、
マンションの上の方でやってんねんけど、そやなしにそれは商店街の中にあって、
とうふ屋さんとか時計屋さんみたいな感覚で「イラスト業」やるというコンセプトで
お客さんとか来たら「いらっしゃいませ」とか言うんです。
(全員爆笑)
奈路 事務員もね、ここに(腕を示して)黒いアレ、そろばんなんかパチパチパチ、とか
やってるような人が事務所名を「彩画堂」っていう風にして電話を取るんです。
事務員さんが「はい、彩画堂だす。毎度おおきに」なんてね。そういうことわざとやると、
例えば向こうがどう思うか考えると面白いでしょ?
藤谷 うち去年まで、黒電話を使ってたんですよで、あるからね「要る?」って聞いたら
「要る要るっ!」って
(全員爆笑)
藤谷 職種が違っても二人のそういう発想が私と似てるって思った。 |
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圓津喜屋のある文の里商店街。昔ながらの趣を今も残します。 |
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奈路 そして、実際にこの場所(圓津喜屋)に初めて来た時、まさに
もう、ここ、ここ!って感じだったんです。
藤谷 そうそう、西桐さんなんか来ていきなり図面みたいなものを描きだして、
ここにスポットをつけて、この壁は白のペンキで・・・とか、もうあまりの
勢いに、この場所を乗っ取られるんじゃないかと心配したほどで。(笑)
奈路 僕が思ったのはひなびた商店街にイラスト事務所があって画廊があったりしたら
街的に面白いかな、というのが・・・・・
藤谷 そうそう、近所の人がきて。
奈路 近所の人がここって何やろう?という目で見はるじゃないですか、それがまた面白い。
庄野 それはギャップを楽しむという感覚なんでしょうか?
奈路 人間臭いことをわざとやってみたら、そっちの方が自分にとって気楽で性に合って
いるのかも知れません。
藤谷 そう、世の中は便利で合理的になって、それに伴って表面的なことが重視される
ようになってきたから。そこで失ってきたものに対する反乱という意味も確かに
あるけど、単純に私が今まで生きてきて、蓄積してきたものを素直に表現したい
だけなんです。パソコンとか携帯がもたらした文化というのは、私が自分で見て
聞いて感じてきたものには含まれないんですよ。 |
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真ん中の眼鏡をかけた方が著者のぶんろくさん。 |
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圓津喜屋・オープニングにはたくさんの人が。 |
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庄野 今後のギャラリーの展開は?
奈路 ここは企画展だけなんですよ。
庄野 貸しギャラリーではないんですね?
奈路 藤谷さんの気に入られたものだけやっていく・・・・・
藤谷 だから、彼らがブレーンだから、彼らが決めてくれるんです!
庄野 コンセプトは?
藤谷 いい加減。(笑) |
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